「退職金が入ったら、まとまったお金を一気に投資に回して増やしたい」——61歳、長年勤めた会社を定年退職し、まとまった退職金を手にしたあなたなら、その使い道について真剣に考え始める時期です。銀行や証券会社の窓口からも、退職金専用の運用プランが次々と提案されることでしょう。
実はこれ、私自身の話でもあります。退職金として振り込まれた1000万円を前に、銀行の担当者から「退職金専用の特別金利プラン」と称する投資信託を熱心に勧められました。「今契約いただければ、通常より優遇された条件でご案内できます」という言葉に背中を押され、契約書にサインする直前まで話が進んでいたのです。ところが偶然その日、久しぶりに顔を出したファイナンシャルプランナーの息子に契約書を見せたところ、「お父さん、これ手数料だけで年3%近く取られる商品だよ。しかも1000万円を一括で入れるって、正気?」と、実の息子から真顔でド直球のダメ出しを食らい、契約直前でハンコを止めることになりました。
退職金を狙う「退職金プラン」の実態
優遇金利は「入口」に過ぎない
金融機関が用意する退職金専用プランの多くは、定期預金部分の金利を一時的に優遇する代わりに、同時に投資信託や保険商品への加入を条件としています。私が勧められたプランも、優遇金利が適用されるのはわずか3ヶ月間の一部資金のみで、実質的には投資信託への誘導が主な目的だったことに、後から気づかされました。
一括投資が抱えるタイミングリスク
まとまった資金を一度に投資すると、その時点の市場価格で全額を投じることになるため、購入直後に市場が下落すると、資産全体が大きく目減りするリスクを抱えます。退職金という「人生でまとめて手にする機会がほとんどないお金」を、たった一度のタイミングに賭けてしまうことの重みを、息子の指摘で初めて実感しました。
息子と一緒に考え直した退職金の使い道
生活費・緊急資金・運用資金に分ける
私たちは退職金1000万円を、当面の生活費の補填分、緊急時のための予備資金、そして将来に向けた運用資金の3つに分けて考え直しました。特に運用に回す資金についても、一括ではなく時期を分けて投資する方法を選ぶことにしました。
分散して投資するとどう変わるか
| 投資方法 | 特徴 |
|---|---|
| 一括投資 | 購入時の価格変動リスクが集中する |
| 時間分散投資(数回〜1年程度に分けて投資) | 購入タイミングが分散され、価格変動の影響を平均化できる |
最終的に、運用に回す400万円を6回に分けて半年かけて投資信託に投じることにしました。手数料の高い退職金専用プランは断り、あらためて低コストのインデックスファンドを中心に組み立て直しました。
退職金運用で気をつけたいポイント
- 「退職金専用プラン」という言葉に惹かれても、手数料体系を必ず確認する
- まとまった資金は一括投資せず、時間を分けて投資することを検討する
- 生活費・緊急資金を確保した上で、余裕資金のみを運用に回す
- 契約前に、家族や信頼できる第三者に相談する習慣を持つ
よくある質問
Q1. 退職金は必ず投資に回すべき?
A. 必ずしも投資が必要というわけではありません。まずは今後の生活費や医療費など、当面必要になる資金を確保した上で、余裕がある部分についてのみ運用を検討するのが基本です。
Q2. 金融機関の窓口で勧められる商品は信用できない?
A. すべてが悪いわけではありませんが、手数料体系や商品性を必ず自分で確認することが大切です。分からない場合は契約を即決せず、一度持ち帰って家族や第三者に相談する時間を作りましょう。
Q3. 60代からの資産運用で気をつけるべきことは?
A. リスクを取りすぎず、生活資金を確保した上での運用を心がけることが大切です。時間分散投資を活用しながら、値動きに一喜一憂しすぎない距離感を保つことをおすすめします。
まとめ
長年働いてようやく手にした退職金を、少しでも増やしたいと考えるのは、これまで頑張ってきたあなたにとって当然の気持ちです。その気持ち自体は、決して欲張りなことではありません。ただ、まとまったお金だからこそ、焦って一度に動かしてしまう前に、一呼吸置いて考える時間を持ってほしいと思います。もしあなたの周りに相談できる家族や専門家がいるなら、契約前にぜひ一言、話を聞いてもらってください。長年の頑張りの結晶であるその退職金を、これからの人生を安心して歩むための土台として、じっくり育てていきましょう。
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