「小規模企業共済等掛金控除」。声に出して読んでみてください。……舌をかみませんでしたか。私は年末調整の紙の前で、この欄の名前を3回読んで、3回とも途中で息が切れました。iDeCoの掛金を書く欄のはずなのに、名前の中に「iDeCo」も「個人型」も出てきません。小規模企業の社長でもない私が、「あなたはここですよ」と案内されているのです。
ペンを持ったまま、気づけば30分。淹れたてだったコーヒーは、アイスコーヒーになっていました。固まっていた間に私がしたことは、欄の名前を眺めることと、書類をななめから眺めることだけです。もし今のあなたが、同じように紙の前で固まっているなら、それは普通の反応です。長い名前の欄を前にして迷うのは、あなたが悪いのではなく、名前が長いからです。
ここまで調べに来た時点で、もう一歩目は踏んでいます。毎月コツコツiDeCoの掛金を積み立てているあなたは、すでに十分えらいです。あとは、その掛金を「ここに書いて、この証明書を添える」だけ。この記事では、書き方と、いくら税金が軽くなるかの目安を、順番にお話しします。
この記事の要点
- iDeCoの掛金は、「小規模企業共済等掛金控除」の欄に、1年間の払込合計額を書きます。全額が所得控除の対象です。
- 金額を書くための書類は「掛金払込証明書」です。例年10月下旬から11月ごろに届く案内が一般的です(2025年は10月下旬と11月下旬の発送でした)。
- 仮のモデルケース(月1.2万円)では、年間で約2万円強の税金の軽減が目安です。月2.3万円なら約4万円強です。
- 会社が給与から天引きしている場合は、書かなくてよいケースもあります。会社の案内を優先してください。
iDeCoの掛金は年末調整で何が変わる?
iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金は、全額が「所得控除」の対象になります。所得控除とは、税金の計算のもとになる所得から、一定額を差し引ける仕組みです。所得が減ると、所得税と住民税が軽くなります。
ここで大事なのは、掛金を払っただけでは、自動的に税金は軽くなりません。会社員の場合、年末調整でこの控除を申告して、はじめて反映されます。つまり、年末調整で書き忘れると、せっかくの控除が使われないまま終わってしまいます。
書き忘れても、確定申告(還付申告)で取り戻せます。ただ、会社員の方は、年末調整で済ませておくほうが、手間が少なくて楽です。
必要書類:掛金払込証明書の見つけ方
iDeCoの控除を受けるには、「掛金払込証明書」が必要です。これは、その年に払い込んだ掛金の合計額を証明するはがきで、国民年金基金連合会から送られてきます。
発送時期は、年によって少し違います。2025年の案内では、1月から9月に掛金の引き落としがあった方向けが10月下旬ごろ、10月以降に初めて掛金を払い始めた方向けが11月下旬ごろに発送予定とされていました。2026年も、同じ時期になることが多いと思いますが、正確な日付は、国民年金基金連合会や、ご利用の金融機関のお知らせで確認してください。
最近は、マイナポータルとの連携で、電子データとして受け取る方法も用意されています。会社が電子データに対応しているかどうかは、勤務先に聞いてみてください。
届いていないときは、次の順番で探すのがおすすめです。
- 郵便受けの下、玄関の書類置き場、家族の郵便物の山を探す
- 「国民年金基金連合会」からの封書やはがきがないか確認する
- iDeCoの口座がある金融機関のサイトで、お知らせや電子の証明書を確認する
- 見つからなければ、コールセンターに再発行を相談する
私は、はがきが届いていたのに、「年金」という文字を見て、保険のお知らせだと思って、年賀状の束の引き出しに入れていました。見つけたのは、年末調整の締切の2日前。ポチ袋の隣で、じっとこちらを待っていたはがきに、「今まで放っておいてすみません」と、小声で謝りました。
申告書への書き方を手順で(記入欄の位置と合計額)
では、いよいよ書き方です。年末調整で使う書類は、「給与所得者の保険料控除申告書」です。この中に、iDeCoの掛金を書く欄があります。
手順
- 掛金払込証明書を手元に置く:はがきに書いてある、「その年の払込金額(または払込予定額)」の合計額を確認します。
- 申告書の「小規模企業共済等掛金控除」の欄を探す:書類の中でも、生命保険料控除や地震保険料控除とは別の欄にあります。
- 種類の欄に「個人型確定拠出年金」などと書く:書き方の指定は、書類の記入例に従ってください。
- 掛金の合計額を書く:証明書に書かれた金額を、そのまま転記します。1月から12月の合計です。
- 証明書を添付または会社の指定の方法で提出する:会社によって、原本の提出が必要か、電子データでよいかが違います。
注意したいのは、掛金払込証明書に書かれている金額が、「12月分までの見込み」を含んでいる場合があることです。年の途中で掛金額を変えたり、掛金の払い込みを一時的に止めたりした方は、証明書の金額と実際の払込額が合っているかを、念のため確認してください。
ちなみに私は、この転記で痛恨のミスをしました。月1.2万円の掛金を12か月分で14万4,000円と書くところを、頭の中で「12万円×12か月」と取り違え、144万円と書きかけたのです。「やった、控除が144万円も!」と喜びかけたところで、証明書の数字を見直して、血の気が引きました。0を1個多く書いて喜ぶのは、年末調整における一番高い遠回りです。数字は、必ず証明書を指さして確認してください。
戻る税金の計算例(月1.2万円、2.3万円の場合)
では、「いくら戻るのか」を、仮のモデルケースで計算します。私の実体験の金額ではなく、考え方を知るための例です。
前提(仮のモデルケース)
- 32歳・会社員・年収400万円
- iDeCoの掛金は月1.2万円を12か月(年14.4万円)
- 所得税率は5%、住民税の所得割は10%と仮定
計算式
- 年間の掛金:1.2万円 × 12か月 = 14.4万円(これが所得控除の額)
- 所得税の軽減:14.4万円 × 5% = 7,200円
- 住民税の軽減:14.4万円 × 10% = 14,400円
- 合計:7,200円 + 14,400円 = 21,600円(年間で約2.2万円)
所得税率は、人によって違います。税率が変わると、軽減額はこうなります。
| 掛金(年額) | 所得税率5% | 所得税率10% | 所得税率20% |
|---|---|---|---|
| 月1.2万円(年14.4万円) | 21,600円 | 28,800円 | 43,200円 |
| 月2.3万円(年27.6万円) | 41,400円 | 55,200円 | 82,800円 |
計算式は、どの欄も「年間の掛金 × (所得税率 + 住民税10%)」です。たとえば、月2.3万円で5%なら、27.6万円 × 15% = 41,400円です。
あくまで概算です。実際の税額は、扶養の有無や他の控除によって変わります。また、「税金が軽くなる」と「資産が増える」は別の話です。iDeCoの運用商品は、価格が変動し、元本割れする可能性があります。軽減額の分だけ得をするとは、言い切れません。
会社が給与天引きの場合の例外・書かなくてよいケース
ここまでは、掛金を自分の口座から引き落としている方の話でした。次のような場合は、少し扱いが違います。
- 会社が給与から掛金を天引きしている(事業主を経由して払い込む形):会社が掛金の金額を把握しているので、自分で書かなくてよい場合があります。会社の案内に従ってください。
- 企業型確定拠出年金(企業型DC)の会社の掛金:会社が出している分は、あなたが申告する控除の対象ではありません。自分で上乗せして出している分(マッチング拠出)の扱いは、会社によって違うので、人事や総務に確認してください。
- 年の途中で加入・脱退した場合:実際に払い込んだ月の分だけが対象になります。
「書かなくていいのか、書かなきゃいけないのか」で迷ったら、勤務先に「iDeCoの掛金は自分で記入する必要がありますか」と聞くのが一番確実です。
2026年12月以降の拠出限度額の見直しについて
iDeCoには、毎月の掛金の上限額があります。会社員で、企業年金などがない方の上限は、これまで月2.3万円でした。報道や各金融機関の案内によると、2026年12月からは、この上限が見直されて、月6.2万円まで引き上げられる予定とされています(企業年金がある方などは、他の制度の掛金を差し引いた範囲になります)。
ただし、2026年12月分の掛金は、2027年1月に引き落とされるので、2026年の年末調整にはほとんど関係がありません。また、上限が上がったからといって、掛金を増やさなければいけないわけではありません。家計に無理のない金額が、いちばんです。くわしい内容は、厚生労働省や、加入している金融機関の案内で、最新を確認してください。
向いていない人・注意点
iDeCoは、税金が軽くなる魅力がある一方で、向かない人、注意したい点もあります。
- 原則60歳まで引き出せません。生活費や急な出費に使えないので、生活防衛資金(急な出費に備えるお金)が足りないうちは、掛金を無理に増やさないでください。
- 運用商品は、価格が変動します。元本が保証されないタイプでは、元本割れすることがあります。成果は保証されていません。
- 手数料がかかります。口座開設時や、毎月の管理手数料が必要です。金融機関によって金額が違います。
- 節税額だけを見て、掛金を決めないでください。税金が軽くなる額は、掛金より小さいのが普通です。
私は税や投資の資格を持っていません。具体的な商品選びや、掛金の金額の判断は、金融機関の窓口や、FPなどの専門家に相談してください。ここに書いた内容は、2026年10月時点の一般的な目安です。
よくある質問
Q. 掛金払込証明書が届かないときはどうすればいいですか?
A. まず、郵便物や、金融機関のマイページを確認してください。それでも見つからなければ、国民年金基金連合会のコールセンターか、利用している金融機関に、再発行を相談します。再発行には日数がかかることがあります。
Q. 年末調整に間に合わなかったらどうなりますか?
A. 会社に相談して、翌年1月末ごろまでの再調整をお願いするか、確定申告(還付申告)で控除を受けられます。還付申告は、翌年1月1日から5年間できます。
Q. 副業がある、または自営業の場合も、書き方は同じですか?
A. 会社員として年末調整を受ける分は、この記事のとおりです。自営業の方や、自分で確定申告をする方は、申告書の同じ名前の欄に書きます。手続きの詳細は、国税庁の案内で確認してください。
Q. 配偶者の掛金も、私の控除にできますか?
A. できません。iDeCoの掛金控除は、掛金を払った本人が受けます。配偶者がiDeCoに入っている場合は、配偶者自身の年末調整や確定申告で申告します。
まとめ
最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。長い名前の欄の前で固まったり、証明書をなくしかけたり、0を1個多く書いたりしても、あなたの積み立てが無駄になるわけではありません。毎月続けてきたあなたは、もう十分にえらいです。自分を責めないでください。
今日の5分でできることは、次の3つです。
- 掛金払込証明書が届いているか、郵便物の山とマイページを探す
- 会社の年末調整の案内で、iDeCoは自分で書くのか、会社が把握しているのかを確認する
- 証明書の金額を、指をさして、声に出して確認する(0の数も数える)
長い名前の欄も、書いてしまえば、たった1行です。あなたの積み立てが、きちんと報われますように。
この記事は、運営者(Ikuo)が自分自身で調べ、まとめた内容です。専門家による監修を受けたものではありません。より詳しい・個別の判断が必要な内容は、専門家や各サービスの窓口に直接ご相談ください。

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